2018年8月4日(土)
クラ地峡とはマレー半島の最もくびれて細くなっている部分のこと。「地峡」とは「海峡」の反対。海を隔てる陸地バージョン。船舶航海的にはこのたった約50kmの地峡があるせいで、インド洋方向からマレー半島東海岸に抜けるには狭いマラッカ海峡とシンガポール海峡迂回し2000kmも遠回りせねばならない厄介な地形。
チュンポーン海岸からミャンマー側海岸(クラブリー川上流)まで最狭44km。タイ側プラチュアップキリーカン(チュンポーン北165km)海岸からミャンマー国境まで最狭部は11kmとタイが最も細くなっている部分でもある。
また昨今飽和するマラッカ海峡回避ルートとして古くから注目されているエリアでもある。マラッカ海峡回避ルートは他にもマレーシア横断鉄道、ソンクラー・トラン運河、カンチャナブリ―・ダウェイルート、泰緬鉄道復活構想など複数候補が上がっている。
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このページは びー旅ロード214. クラ地峡とマラッカジレンマ
旧日本軍のクラ地峡横断鉄道は大まかに上のようなルート
マラッカ海峡飽和問題2019
マラッカ海峡は太平洋とインド洋を結ぶ海上交通上の要衝。南シナ海とアンダマン海を最短距離で結ぶ。中東から日本や中国への原油輸送の巨大タンカーが狭くて浅い海峡をひしめくように行き来する。
マラッカ海峡の全長は900km 、幅は狭いところでざっくりと65~70km、平均水深は25m、岩礁や小さな島、浅瀬が多く大型船舶航行にはかなりの危険水域。この航路上シンガポール付近の
Phillips Channel は海峡の幅が2.8km、水深23m といわれる。大型船の航路が限定されるので海賊の被害にも遭いやすいエリアでもある。
かつてここは座礁や海賊問題で過去何度も話題に上った。輸送量増大しマラッカ海峡飽和問題が話題になってからも久しい。マラッカ海峡回避ルート構想はかねてから複数あるも実現への具体的取り組みは現状ほぼ皆無。クラ地峡にマラッカ海峡回避ルートができることは日本のみならずアジア諸国の経済には大きなメリットがある。しかしその裏にはシンガポールの独占権益消失や、米国と中国の軍事プレゼンスにもかかわるややこしい問題が隠れている。
クラ地峡 ミャンマー側のクラブリー川
クラ地峡横断鉄道は日本軍の第2泰緬鉄道だった
あまり知られていないが、かつてクラ地峡には旧日本軍によるクラ地峡横断鉄道が運行していた。1942年6月ミッドウェー海戦敗北後、危険になったマラッカ海峡回避輸送ルートだった。戦場にかける橋で有名なノンプラドゥック~タンピュザヤの泰緬鉄道に続く、第2泰緬鉄道といっていい。終戦後線路は撤去され現在はチュンポーン駅に当時の機関車の展示があるのみ。
現在も多くの巨大タンカーが中東から日本や中国に狭いマラッカ海峡を大回りで迂回するルートで原油が輸送されている。クラ地峡は鉄道にせよ運河にせよパイプラインにせよマラッカ海峡回避ルートとして最も効率のいいルートだ。仮にクラ地峡横断鉄道が復活すればその経済効果は計り知れない。マラッカジレンマでぎらついた中国のソンクラー運河構想よりずっと現実味のある計画になると思う。日本はもっとタイやミャンマーにマラッカ海峡回避ルートとしてのクラ地峡横断鉄道をプレゼンをして働きかけるべきだと個人的には思う。
マラッカジレンマとは 中国南シナ海軍事プレゼンス
マラッカジレンマとはマラッカ海峡において中国が抱える潜在的な脆弱性のこと。中東からの輸入原油全体の8割が通過するマラッカ海峡、シンガポール海峡の安全保障をシンガポールの米軍
Changi Naval Base に握られていることを指す。
有事にここを閉鎖されると中国はいとも簡単に致命的な兵糧攻めにあうことになる。
中国はこの痛ましい状況をなんとしても早急に解決し、マラッカ海峡回避ルートを新設したいのだ。また逆に米国は中国の最大の弱みを握るマラッカ海峡オンリーの現状維持を望む。そんな中マラッカジレンマ解消の計画の一つだったマレー半島南部、マレーシア国内を横断する東海岸鉄道(ECRL)を進める中国企業に先日2018年7月工事休止命令が出された。マレーシア政府より中国へ過度に依存したインフラ整備事業だと判断された。たぶんマラッカジレンマ含む中国の軍事プレゼンス部分も見透かされての拒否だ。そして次に中国が狙うのはタイ南部のソンクラートラン運河計画とささやかれている。
ただ中国のマラッカジレンマのみでなく、2018年現在、マラッカ海峡運行飽和状態はいずれは解決しなければならない問題だ。古くからいくつか構想されている回避ルートでの新物資輸送ルートは遅かれ早かれ出現するものとみられる。中国資本のソンクラー運河になるのか、クラ地峡横断鉄道になるのかは不明だが。私はこのことは盛んに騒がれているチェンマイ新幹線(タイ北部高速鉄道)よりずっと大きな国家レベルのプロジェクトになると思う。
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中国資本のソンクラー運河構想とパッタニー独立問題
マラッカ海峡回避のマレー半島横断ルートは古くから構想だけはあった。クラ地峡運河構想は1677年にすでに提唱されていた。そして現在はクラ地峡の南約160kmのソンクラー~トランに中国資本の運河構想が模索されている。
しかし、ソンクラー運河構想には165kmという長い距離も、パッタルン~トラン間に結構大きな山脈が隔てる地形もさることながら、タイ政府が拒絶する大きな壁がある。それがパッタニー独立問題だ。
タイは深南部といわれるマレーシア国境東海岸エリアに深刻な少数民族独立紛争問題を抱えている。平和なイメージのタイで唯一この深南部3県は外務省の「レベル3、渡航中止勧告エリア」に指定されている。イスラム教徒マレー系住民の独立紛争が100年以上前から続いているからだ。今もタイの警察や軍に対して散発的な爆破テロが起こっている。
この根の深い独立紛争を抱える地域に自ら運河で国を分断することは、パッタニー独立運動を加速させることになる。その懸念をタイ政府は持っているのだ。構想はあっても決定的に実現しにくい背景がソンクラー運河にはあるのだ。
クラ地峡横断鉄道の可能性
クラ地峡横断鉄道の日本からの提案は、中国のような軍事プレゼンスの側面がない。パッタニー独立問題のようなセンシティブな地理的デメリットもない。
日本の鉄道技術、港湾開発技術の出番なのではないか。米軍への配慮よりアジア経済発展を優先させるべきだ。
またこの手の開発はこれまでの日本がよくやってきたODAのような無償開発援助にするべきではないとも思う。中国がやっているビジネスとして国家共同開発として提案するべきだ。中国にできて日本にできないはずはない。ましてやタイは比類ない親日国だ。
日本に合わない消費税を無理にあげて庶民苦しめるより、日本の技術を必要としている国々へもっと働きかけるべきだと個人的には思う。
インドネシアの国営フェリーはドイツ製
びー旅つぶやき
22:25 2018/08/03
昨日8月2日インドネシアジャワ島のブロモ山に登った方からの投稿情報をいただく。確かブロモ山は22万Rp(1700円)の高額入場料があったはず。しかしその方は1万Rp(78円)の入場料で頂上までのトレッキングされたそうだ。そういう抜け道があったとは知らなかった。
そんなエッジのきいた情報を日本にいてすぐに公開できるなんてネットって便利だ。yarizohさん貴重な最新情報ありがとうございました。今のジャワ島は日本よりも涼しいらしい。
ブロモ山トレッキング2018はこちら
23:11 2018/07/31
カオサン通りで8月1日から屋台運営が禁止になる。去年2017年の12月25日にも一夜にして屋台が一掃される強制撤去はあったが3日後には復活していた。今回はより本腰いれての強制撤去らしい。クロントーイのラオ市場やバンラックの花市場でも屋台禁止になるとのこと。ネズミのちょろちょろ歩き横目で見つつ、お座りして待つ野良君にチキンの骨あげながら食う屋台飯がうまいのに。バンコクがまともになっていく。ちょっと寂しい。当面バンコクだけのようなので郊外や地方行けばまだまだ屋台は健在。
びー旅つぶやき
セントレアとエアアジア
18:13 2018/07/27
2018年10月30日より名古屋セントレアからバンコクへタイ・エアアジアXが1日1便で就航。就航記念で右のような片道7000円台のプロモ航空券が出ている。タイ人観光客や欧州組呼び込んで名古屋~千歳エアアジアジャパン盛り上げる戦法か。
日本人にはつまらないといわれる名古屋も海外うけはいいらしい。伊勢神宮も忍者の里も近いし。訪日インバウンドをがっちり捕えるオリエンタリズムのコアな部分だ。閑散ドンムアンの救世主がエアアジアだったようにセントレアの救世主にもなれそうな勢い。さらに2018年8月16日よりエアアジアX関空~ホノルルも週4から毎日運行に。いけいけのエアアジア。
名古屋発バンコク乗りてえけど今ちょっと無理かな。成田ドンムアンは10月頃まで1日3便のようだが11月以降はまた2便になっている。
いつも情報いただいている五十嵐さんから女子旅投稿情報いただく。今日本にいてネタ切れ気味なので助かる。女性の目線はびー旅にはない良識的な情報にもなるし。五十嵐さん情報ありがとうございました。
びー旅つぶやき
18:58 2018/07/23
今日の新宿西口40℃。右は新宿駅西口にあるダイキン温度計。今日の午後13時半頃。ハワイ29℃やタイ29℃(いずれも今日の最高気温)よりずっと暑い東京。日本の暑さは救いのない暑さ。熱中症で人が死ぬニュースは日本でしか聞かないのはなぜだろう。アブダビやパンタナールでは48℃とかなるのに。
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