海外旅行にはお金をかけない方が楽しい旅になる場合が多くある。特に新興国、途上国と言われる日本より物価の安い国で庶民生活に入り込むコアな旅には、日本の日常では決して遭遇することのない異次元世界が待つ。その方法にはいくつかのパターンがあるが、その中の一つに現地の3等列車旅がある。お金をかけない方が楽しくてテンション上がる異次元体験型海外旅の典型だ。
そういう濃い列車旅はインドでもミャンマーでも体験できるが、今回タイに焦点を当ててその利用方法と注意点を解説する。
タイの各方面には鉄道が張り巡らされ外国人でも現地の方と同じ料金で移動ができる。特急、急行、準急、普通とあり、客車にも1~3等があり、座席車両と寝台車両がある。特急は1等2等席のみで3等席はなく、逆に普通列車には3等席しかない。
そしてそのタイ国鉄最安3等列車には普通(Ordinary)とローカル(Local)がある。双方とも3等客車しかない激安地元列車。違いは下りの場合、始発がバンコク発であるかどうか。ローカルとはロッブリー始発ピッサヌローク終着のような途中ローカル駅発ローカル駅着のような列車を言う。地元民仕様でタイ人運賃無料。ちなみに3等客車はラピッド(Rapid)にもあるが料金は2.5倍になる。
ローカルはタイ国鉄のサイトではルーラルコミューター(Rural Commuter 地方通勤列車)ともいわれ、バンコク発ロッブリ行などはバンコクコミューターと表示されている。
外国人旅行者の利用を想定されていないので車両は3等しかない。さらに各駅停車で、途中駅ので急行や特急の待ち合わせが多い。タイの場合、単線区間多く、往路復路同じ線路を使うため。
タイ列車旅の料金
外国人観光客に利用される列車は、主に特急(スペシャルエクスプレス)や急行(エクスプレス)の2等寝台以上の列車が多い。
料金はバンコクからスリンまで片道460㎞の場合、普通オーディナリーの3等席73THB(292円)。準急(ラピッド)の2等席で277THB(1,108円)、3等席182THB(728円)といった具合。すべてノンエアコン(ファン:扇風機)車両。特急の1等エアコン寝台は下段1,372THB(5,488円)、上段1,172THB(4,688円)と異様に高い。3等と1等の価格差は18倍もあるのだ。日本の新幹線の値段思えば小銭なのだが、同じ距離を同じような値段で1時間で行くエアアジア乗ったほうが効率いいような気もしないでもない。
参考までにバンコクから国境超えてシンガポールまで月2度運行する高額の外国人観光客用豪華列車のイースタンオリエンタルエクスプレスも有名。3泊4日で一番高い客車は1人100万円以上する。
イーサーンで進む中国製高速鉄道高架工事
タイの庶民の乗る普通列車(オーディナリー)の3等座席車両はそれらの対極にある濃い列車なのだ。円安物価高の2023年5月現在でも東京~大阪間にあたる約460㎞走って292円(1THB=4円計算)。近年アピワット発の中国製コラート高速鉄道完成したらその辺の環境も激変する。ただ特急、急行の立場は激変するだろうが、庶民用の普通3等の立ち位置は変わらないような気もする。差し当たって今回はその3等列車の利用にあたっての利点欠点の私的考察。
クルンテープアピワット駅(旧バンスーグランド駅)
タイ3等列車の利点、欠点
まず、3等列車の欠点。地元の方用のローカル列車なので、快適性にやや欠ける。単線区間多く、対向列車や、特急急行の通過待ち時間が多く、時間がかかる。遅延も多く、東京~大阪間の距離に9時間かかることも。チケットがネット予約できず、当日出発前、駅の窓口でしか買えない。車内でタイ語しか通じない。普通列車の本数少なく行き先によっては1日1本しかない。
また、遠距離移動の場合、終点まで行かない欠点もあり。例えば北線の場合、特急や急行はバンコク発でチェンマイを終点とするが、普通列車は半分の距離のピッサヌロークまでしか行かない。南線の場合も1日1本だけのトンブリ駅発の普通列車はチュンポーン60㎞先のランスアンまでしか行かず、その先のスラタニやハジャイへ行く場合、途中宿泊を余儀なくされる。
東北線バンコク発も同様で、特急や急行はウボンラチャタニまで行くも、1日1本の普通列車はスリンまでしか行かない。なのでコラートやアユタヤなど近距離なら問題ないが、ウボンラチャタニやチェンマイまでなど長距離移動の場合、途中宿泊しながらゆる旅を楽しめる態勢が旅行者側に必要になる。
メークロン線接続のマハーチャイ線 ウォンウェンヤイ駅
ウォンウェンヤイ→マハ―チャイ31.2 km (東横線の渋谷~横浜くらいの距離)10バーツ、1日17往復。バンレム→メークロン33.75 km、10B、1日4往復。マハ―チャイ→バンレム間は渡し舟があり3バーツ。メークロン鉄道市場はツアーでも人気があり、運賃10バーツの列車を見るのに1400バーツのツアーが催行される。
メークロン行き方
●タイ国鉄予約サイト アピワット→スリンの例
タイ国鉄ネット予約ではオーディナリー(普通;3等列車)は買えない。特急、急行、準急はネット予約できる。
タイ国鉄ネット予約ページ2023年版
3等列車の利点。料金が劇的に安い。深い異次元体験ができる。昭和に活躍した日本製の中古客車使っている線もあり、ここは本当に現代なのか?という不思議なタイムトラベル感を味わえる。通勤通学用なので、夜間運行の高額?寝台車でなく、昼間運行で窓全開の地平線の見える大地を疾走する車窓が強烈インパクト。
また、利点にも難点にもなる点として、3等列車はエアコン車でないので窓全開で風びゅんびゅん受けての激走。日本で列車の窓開けて走行は見られなくなっているのである意味貴重な体験。特急や急行はバンコクを夜出発して翌朝遠方の終点に朝着くスケジュールの場合が多く、高い金出して乗っても夜中車窓真っ暗で味のある風景が何も見えない。夕方で見えたとしても、特急や急行のエアコン車は窓があかず、曇りガラス状態の汚い窓越しの景色しか見えない。
さらに車内はエアコンききすぎくらいの寒さ。冬の日本から行く場合、そのエアコン冷気は私にはありがた迷惑でしかない。SDGs的に真っ向反する旅だ。エアコンなし窓全開で車内にすすきの綿毛の舞うほうがちょうどいい涼しさで味があると個人的には思う。
木製の固い座席もあるが、そうでない若干ましな座席もある。
40年前の旧東急車両乗車でタイムトラベル感覚 メークロン線 上画像の違いは昭和初期か、昭和中期かの違い。
タイ3等列車乗り方
タイの3等列車はタイの庶民向けの列車で観光客仕様にはなっていない。なので利用には旅行者側にある程度の立ち回りが要求される。何の準備も事前情報もなく駅の券売窓口に行ってチケット買うという方法で最安3等席は確保できない。
タイの3等列車は、特急(Special express)急行(Express)にはない。準急(Rapid)に3等席はあるが、同じ3等なのになぜか運賃2.5倍もする。先に述べた460㎞走って300円と言うような激安の3等席は普通(Ordinarily)のみにあるのだ。
シュールな異次元車窓 カメラをこれだけ出してもおとがめなし
2023年現在この普通列車のバンコク始発駅は、準急以上の始発駅のクルンテープアピワット駅(バンスーグランド駅)発ではない。北線、東北線はホアランポーン駅発。南線はトンブリー駅発とややこしい。そしてこの普通列車は運行本数が少なく、路線によっては1日に1本しかなかったり、パタヤ(終点バンプルータールアン)行普通列車のように、平日のみ運行で土日運休(パタヤの場合、土日は代わりに急行が運行しているが料金が小銭高い)だったりする。またRapid以上でできるネット予約も普通列車ではできない。
なので1日1本の普通(Ordinarily)の発車時刻前にしかるべき駅に行って、駅の窓口で直接現金購入せねばならない。ただ全席自由席なので、当日購入でも予約いっぱいで買えなくなることはない。
駅の窓口でも直前購入必須(たぶん発車時刻1時間前から)で、前日予約とかはできない。窓口では基本タイ語。最近はだいぶ英語通じるようになっている。当然だが日本語は全く不可。ただ基本行き先言えればいいだけなので、タイ語しゃべれなくとも窓口での行き先連呼でたぶん乗車券確保できる。全席自由席の普通列車はチケットなしで乗っても、回ってくる検札の車掌から買うこともできる。
カンチャナブリの戦場にかける橋を渡るタイ国鉄列車
駅窓口購入の罠
普通列車に乗る場合。1日1本の列車出発時刻の1時間前に駅に行って券売窓口で現金購入が原則。ただそこで最安普通列車を希望しているのに特急や急行の高いチケットを買わされる場合がたまにある。外国人観光客が普通列車に乗るという発想が現地にあまりなく、普通列車は1日1本だが、特急や急行はもっと頻発しており、時間の近い特急や急行があったりすることが背景にある。
なので事前に普通列車の出発時間、列車番号、料金をネットで確認し、行き先のみでなく列車番号を、できればタイ語で丸暗記して連呼できるようにしておいた方がいいかもしれない。
私もちゃんと列車番号まで指定しているのに、その3倍料金請求される経験何度もあり。当然つたないタイ語で猛反論して希望の普通列車乗車券を確保する。10年位前までは頻繁にこの正規窓口でのぼったくり経験したが、最近は減ってきた。ラピッドの場合なら、300円が750円になる小銭ぼったくりなのだが、金額の問題でなく気分悪いので、敢然と立ち向かう。正直に言うと、実はこの小銭バトルも楽しみの一つでもあるのだが。
こういうぼったくりに備えて、事前に普通列車の出発時間、列車番号、料金は調べておくべき。列車番号などを紙に書いて用意しておくことも対策になると思う。普通の算用数字で通じる。
バンコク(ホアランポーン駅)からスリンまで普通列車で行くにはこの233という列車番号と、11時30分という出発時間が重要。バンコク発東北線の普通列車は1日に1本しかない。ラピッド以上はたくさんあるが。検索はホアランポーン駅の場合Bangkok。
バンコク→スリン460㎞を73THB(292円)で行く。
タイ鉄道3等列車確保具体例
実際の具体例 バンコク→スリン 460㎞
バンコクから東北線でスリンまで普通列車73バーツで行く場合。以下のサイトから普通列車の列車番号、運賃などを調べられる。
タイ国鉄列車運行検索
出発駅 ホアランポーン駅
出発時間 1日1本 11:30AMのみ
列車番号 233
運賃 73バーツ(292円)
233という番号が重要。出発時間の1時間前に行って窓口で、「スリン」「ソーン サーム サーム、タンマダー(233、普通列車)」を連呼する。もしくは233
と紙に書いて見せる。SIM入りスマホあるならスマホの翻訳アプリ使うのも手。英語が通じる相手なら英語で指定する。請求が73バーツより高い場合、勝手に上位クラスの列車にされているので「マイチャイ、タンマダー(違う、普通列車だ)」で徹底抗戦する。ぼったくり請求されても毅然とした態度で文句言えば、「ちっ、気づきやがったか。こんちくしょう」とたいていすぐに正しい料金の請求になる。
プーケット、サムイ島方向へ向かう南部線の普通列車の始発駅はホアランポーン駅でもアピワット駅でもなく、トンブリー駅なので検索も、行く駅も別になるので注意。普通列車はランスアンまでしか行かないのでスラタニ方向へ行くにはチュンポーン宿泊になる。
詳細は以下のリンクへ
プーケットに鉄道で行く方法
丸いわっかの吊り輪がタイムトラベル感を醸し出す。
びー旅つぶやき 日々の日記
11:29 2023/05/17
大手電力7社来月値上げ。消費増税に続く物価高、さらに続く基礎インフラ値上げで、生活に追いつめられる庶民の一方で、著名商社の過去最高額黒字、三菱商事も三井物産も1年間の決算で最終利益1兆円超のニュースに違和感。格差社会が一歩進んで分断社会になっていく。
円安で海外拠点を持つ商社が潤うことは承知の上であえて言う。庶民が電気代ガス代で苦しめられている金が、いきさつどうあれ、結果的に大企業に流れていく構造になってしまっている。「合法的な正しいやり方」で格差が広がっていく。ここに少子化の根源があることに気づくべきではないのか。
狛江殺人、ルフィー強盗、銀座ロレックス強盗、連続する闇バイトでの富裕層への強盗殺人事件等は、未来のない若者世代の絶望地獄からの富裕層への反逆とみるのは深読みしすぎか。総理や元総理を「若者」が襲撃する事件など私世代の過去にはありえなかった。ただそれらは広島サミットにみられるような膨大な税金を使っての警備で、ある程度は対応できる。そのもっと先にある対応が難しい若年世代庶民の「合法的な反乱」は少子化、子供を産まないことなのかもしれない。しかも若年世代はこれを反乱とは意図していない。自分の意志と関係なく、追いやられている現状が根が深い。
5年後日本はインドに抜かれてGDP4位の経済大国ならぬ経済「中」国になる。生活を豊かにするあらゆる分野でコモディティ化進み、個々の人権意識が上がっていくと、新興国、途上国の教育水準が上がり、人口の多い国が勢力を増す。今の日本の既得権益層への富の偏りは少子化を加速させ、結果的に日本を衰退させる。…と勝手に思う今日この頃。
スパンブリー駅の味のある廃車 格安なのにタイムトラベル状態