ムンバイ~アーメダバード インド新幹線展望
インド西部の日本のからむ高速鉄道建設計画。2023年の開業を5年延期。多分正式運行はそれ以上遅れる。用地買収の難航とされるが問題はそれ以外にも多数ある。ムンバイとアーメダバード間508km。JR東日本が東北新幹線で走らせるE5系はやぶさ投入予定。最高時速は320km。走行距離508km
所要2時間7分。運賃3000ルピー(4500円)程度になるとされる。
現在の急行と比べると2等車の15倍。誰が乗るんだそんな料金で?GoAir やスパイスジェット乗った方がいいんじゃないの?運行しても利用者数が少なすぎて採算割れは目に見えている。台湾新幹線の赤字転落が浮かぶ。政府開発援助(ODA)事業費も当初の1.8兆円から2兆円超へ。
だいたい国際プロジェクトはいつまで施しスタイルが続くのか。数字からもボタンの掛け違いが浮かび上がる。庶民に無縁の援助は意味があるのか。日本側が自慢の最先端を売り込みたい事情以上に、現地はもっと現実的な鉄道インフラを望んでいる。さらに施し援助でなく対等なビジネスパートナーを求めているのだ。初動プロジェクトでのつまずきはその先にある膨大な鉄道計画をすべてBRICs諸国や欧州など他国にさらわれる懸念をはらむ。コロナ明けのインド鉄道の未来を考える。2020年9月30日公開。
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クラス別運賃の例 ムンバイ~アーメダバード 508km |
1A |
First AC |
1,940Rs (2,910円) |
EC |
Executive Class |
1,930Rs (2,895円) |
2A |
AC 2 Tier |
1,150Rs (1,725円) |
FC |
First Class |
950Rs (1,425円) |
3A |
AC 3 Tier |
815Rs (1,222.5円) |
CC |
Chair Car |
665Rs (997.5円) |
SL |
Sleeper |
315Rs (472.5円) |
2S |
Second Seating |
180Rs (270円) |
1円 = 0.69815 INR/1 INR = 1.4324円 2020/09/26 。1Rs(ルピー)=1.5円で計算。1A料金から考えると新幹線運賃3000Rsの設定はあながち無理な設定とも思えないが1Aを利用する客は極めて少ない。最低料金3000Rsなら運行しても利用者はかなり少なく採算割れは目に見えている。庶民に無縁の鉄道インフラの存在価値はたぶんない。
●比較のための700km移動のスパイスジェットの料金
トリバンドラムからチェンナイは直線距離だと約700km、LCCフライトだと2,548Rs(3,822円)とインド新幹線より安い。所要は1時間50分。
●国際プロジェクト完成形の例 チェンナイメトロ
チェンナイメトロは日本のODAが絡んでいるが車両はブラジル製。日本が金出しているのに日本製にならないこの流れに日本の鉄道技術輸出の根本的な問題があるのではないか。
チェンナイメトロは郊外に出ると高架になる。市内から空港まで17kmを50Rs 75円。並走する在来線使うと5Rs 7.5円。2020年1月双方乗車したが、メトロはガラガラ。在来線ラッシュ状態だった。
インド高速鉄道計画
Indian high speed bullet train project
インド高速鉄道構想は複数あげられている
高速鉄道が最先端完全日本製だと完成後の維持にも巨額かかる。赤字転落の負担は将来のインドに降りかかるのだ。日本側の自己満足に等しい最先端の輸出にこだわらず先方の事情に合わせるべきだ。不確定な経済成長をあてにしての予算暴走はインドの事情を考えない無責任な押し付けでしかない。
現在コロナ明けに向けて、多額の公共事業費(税金)をつぎ込める日本国内と同じ最先端新幹線輸出でなく、途上国向けの廉価版高速鉄道を考える分岐に来ていると考えるべきだ。長期的に見れば結局その方がインド、日本双方にメリットがあるのだと思う。少なくともインドネシアの二の舞は避けたい。
ビエンチャン方向への中国製高速鉄道工事。タイ、コーンケン郊外2019年
台湾新幹線赤字転落も、日本製になる予定だったインドネシア高速鉄道が中国にさらわれた件も、タイ北部高速鉄道の日本側着工が延期している件も根底にある問題は同じなのだ。日本が先方の事情にあった廉価版高速鉄道を提示できていないことなのだ。タイの場合、北部高速鉄道よりラオス方向への中国製高速鉄道や、マレーシア、シンガポールへの南部高速鉄道(マレーシア側は中国製で開通済、タイ側は構想のみ)の進捗のほうが目覚ましい印象を受ける。
インド3等列車に乗り込む地元の方々
インドの嫌中国ムード インドで日本が有利な背景
インドにはパキスタンほどではないが、中国に対する嫌中国ムードが内在している。庶民レベルでも政権レベルでも。対して日本に対する親日感情は強い。なので現状は他国で勢いを持つ中国製高速鉄道インド進出は可能性が低い。
1962年の中印国境紛争より中国とインドには長い紛争の歴史がある。さらに加えて今年2020年5月5日コロナ渦中、中国はチベット西部とパキスタン占領下のカシミールに挟まれた要衝ラダックの2カ所を含む3カ所に軍部隊を展開。数週間にわたる交戦でインド側に数十人の兵士が負傷。6月中旬にガルワン地域での激しい軍事衝突でインド軍兵士20人が死亡した。中国側にも死傷者が出ているらしい。両国の国境紛争で死者が出たのは約40年ぶり。
この状況でインド国内に中国製高速鉄道計画などありえない。チェンナイメトロが中国製でなくブラジル製になった背景もたぶんこの辺にある。
インドの独立は1947年8月15日なのだが、アンダマン諸島ポートブレアにインド国旗がはためいたのは1943年。背景には日本軍のサポートがあった。
一方でインドの親日感情は1940年代から続いていたイギリスからの独立運動に端緒をなす。当時の日本軍が独立に加勢してくれた…。イギリスに対して共に戦ったという庶民レベルからの親日感情がある。実際は日本軍側は作戦上の都合でインド独立運動を利用してイギリスと戦っただけなのだが、現地には独立を支えてくれた国とする風潮がある。なので近年の経済的貢献以上に根深い親日ムードがインドにはある。この追い風状況をふいにするべきではない。
ニューデリー郊外 ニザムディン駅
ただ、インド側にも冷徹なビジネス目線の臨界点というものは当然あるはず。日本側が中国が対抗馬にならないことをいいことに、先方の要望を無視した一方的な提案を押し通せば、インドネシアのごとく計画途中で欧州製やブラジル製に流れる可能性も少なくない。仮に強引に押し通して完成しても誰も乗らない赤字路線になれば次の高速鉄道計画に日本は当然除外される。
高速鉄道の天敵LCC急成長中。高速鉄道予定運賃より安い。
チェンナイセントラル駅近くの路地裏
食い違う日本とインドの高速鉄道の未来
高額の施しにみあう将来展望が見えない
どんなに素晴らしい最先端技術でも、日本国民の多額税金を施さねば維持できない高速鉄道にインド側が疑問を持つのは当然だ。
「時速320kmでなくていいので、工費や維持費を半分にしてほしい」は現地の切実な願望だ。つまり廉価版高速鉄道の要望だ。仮に強引に高額工費の日本案で引っ張って運行はじめて、延々赤字を垂れ流す誰も乗らない高速鉄道になってしまえば、日本の高速鉄道技術はインドのみならず世界中から見放される。要は10年先を見るのか、50年先を見るのか視点の違いなのだ。
チェンナイ エグモア駅はチェンナイ以南長距離鉄道拠点駅
日本とインドの高速鉄道展望の差異
コロナパンデミックとインドの未来
インドは2050年にはGDPで日本を抜いて世界3位の経済大国になるといわれている。しかしその試算にはコロナパンデミックのようなイレギュラーな障壁は考慮されていない。また現在も実質消えてないというカーストもさることながら、富の一極集中で貧困層が減らない状況で3000Rp
の高速鉄道が庶民のものになるとは到底思えない。この類の経済成長の試算はむちゃなプロジェクトの都合のいい仮説でしかないのだ。
現状のインド新幹線計画停滞は、最先端技術の輸出という、つくる側のその場の自己満足的な「輝かしい功績」のために、本来最も重要なはずのインドの未来を大きく損なう構図になっていないか。
今、皮肉にもコロナショックでその姿がさらに強調されている。運賃3000Rs の裏付けになる今後のインドの「爆発的な経済成長」と「庶民の可処分所得の急増」には明確な論拠は何もない。要するに最先端にこだわるのではなく庶民の乗れる高速鉄道にするべきなのだ。ODAの巨額拠出ももとをただせば日本国民の血税。施しだろうと借款だろうと、むちゃな予算の大元がむちゃな消費税増税にあることは日本人庶民にとっても納得はいかない。
インド北部 ムザファルプール
びー旅つぶやき
10:37 2020/09/30
「金持ちよりもメンタルが強い人が最強」のネットコラム見た。金持ち、貧乏をキーワードに集客する金の亡者系ページだ。はたしてそうか?メンタルめちゃ弱の私はメンタルが強い人より、もっと強い人を知っている。それは健康である人。さらに自由である人。
ガンや心臓病、脳疾患での半身不随、ALS、末期糖尿病や腎臓病。人工透析など、かかわることになるとしゃれにならない深刻な状況はあげればきりがない。健康でなく、メンタル強いだけは本当に最強なのか。小金があってメンタルが強い人ほど金の亡者系で「根性と努力があれば何でもできる」と無理をして更年期に健康を害するパターンは少なくない。また本当に最強メンタルな人と、そうでないのに無理をして強くなっている人の差もある。後者の場合、ストレスからの免疫低下が10年後にしゃれにならない疾病を招く。
さらに年収10億でメンタルも強い人が自由の全くない生活をしていたとしたらその人は本当に最強か。年収10億いらない、生活できる金だけでいいから自由が欲しいとはならないのかな。さらにその拘束奴隷状態で、上のしゃれにならない系の疾病罹患なら最強メンタルはもつのだろうか。ただもし、このコラムの裏に「もっとメンタル強く持って努力して既得権益者の奴隷として体を壊すまでボロボロになるまで働こう」の意図があるなら別だが。
びー旅つぶやき
コロナ第2波?
11:25 2020/10/01
コロナ禍の第2波が落ち着いてきた?第2波はいつやってきたんだ?感染者数だけを見れば確かに立派な山だ。子供でも2番目の山とわかる。しかしこれは第2波なのか?その下は死亡者数。ほぼ70歳以上が占める。
・コロナ日本の新規感染者数グラフ
・コロナ日本の死亡者数グラフ
スペイン風邪の例を挙げ、「第2波がやってきて日本でも何十万人死ぬ」と予言していた方々のはずして収まりどころの悪い事情はわかるが、これを第2波とするのはただ単に本質を読み切れていないだけなのではないのか?もっとも本来の論点は第2波到来云々より日本で深刻な感染拡大が起きたかどうかなのだけど。大手メディアが状況を読み切れず「大変なことになる」と騒いでいたことは今思うと恥ずかしいことだった気はする。第3波はやって来ない?読みの甘さ以上に予言のぬるさに力が抜ける。
対照的に世界での死者数は100万人を超えた。東京五輪はまだ中止宣言を出せず。「開催する」というと国内関係者からは喝采あびるが、もしこのまま強行すると日本は世界から猛批判を浴びることにきっとなる。
11:23 2020/10/01時点 世界のコロナ死者 1,012,894人
参照 Johns Hopkins University
トリバンドラムのバス