タイで進む中国製高速鉄道計画
2020年10月28日、タイ政府は中国政府とバンコク~ナコーンラチャシーマー(コラート)253kmのイーサン高速鉄道建設契約に署名。中国技術による高速鉄道を、タイの投資で建設する国際プロジェクトだ。2023年開通に向けてバンコク~ナコーンラチャシーマー間の中国製高速鉄道工事が進行中。
復興号CR300AF(右上)、最高速度250km/h、軌間1435mm。バンコク~ノンカイ高速鉄道計画の第1段階。これは実質バンコクからノンカイの先24kmのラオスの首都ビエンチャンに接続することに等しい。この高速鉄道はラオス北部へ延伸、ラオス縦断して昆明に接続する構想という。さらに南方のタイ南部高速鉄道とマレーシア高速鉄道に接続してシンガポールに至る東南アジア縦断高速鉄道の未来像を描く。
一方対照的に日本の新幹線技術で決定していたタイ北部高速鉄道は2019年9月に事実上消滅した。インドネシアに続いてタイでも日本の高速鉄道技術が事実上相手国に拒否された。なぜなのか?その背景を考察する。
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バンスーセントラル駅がイーサン高速鉄道バンコク拠点駅。チェンマイ新幹線(タイ北部高速鉄道)ではなくイーサン高速鉄道の拠点となる。親日国のタイでなぜ日本の得意分野の高速鉄道開発が受注できないのかを探る。
コラート郊外の高架工事。イーサンはピッサヌローク方向より起伏が若干多くサラブリーあたりで高架やトンネルが不可欠な複雑な地形を含む。
東南アジア縦断高速鉄道
Bangkok-Nong Khai High Speed Train
2020年11月1日(日)
中国製高速鉄道、復興号CR300AFが外国に輸出されるのは今回が初めて。今回の両国の建設契約はナコンラチャシマーまでの253km区間。ノンカイまで延伸しビエンチャンに接続する計画。さらにその先の構想としてはラオスを縦断し、バンコクと昆明を結ぶ約1560kmの高速鉄道の最初の区間とされる。
このプロジェクトの最終到達点は南方へも延伸しマレーシア経由シンガポールまで結ぶ東南アジアを縦断する中国の一帯一路具現化の高速鉄道なのだという。しかし課題は山積。東南アジア縦断高速鉄道実現へはとてつもなく遠い。
一番の難点はこの路線にそこまで多額の工費と維持費をかけて高速鉄道を通す需要があるのかということだ。もともとイーサンやラオスは経済発展から取り残された閑散路線で物資輸送ルートとしても重要度は低い。「工事費用は地元、技術のみ中国」というやり方では、中国の一帯一路実現のために地元が借金まみれになる可能性が少なくない。その債権者が中国という構図もなかなか鋭い展開。日本の日本国民の血税を垂れ流すODA施しスタイルの対極か。
特にラオス北部から中国国境にかけての山岳地帯に高架やトンネル駆使した高速鉄道を通すのは莫大な工費が必要だ。いくら廉価版高速鉄道が十八番という中国でもかなり無理がある。中国悲願の一帯一路構想と言えど、完成後運賃で賄える経済効果と地元需要が昆明~バンコクルートにあるのかという根本的な問題をはらむ。
バンコク~ナコーンラチャシーマ(コラート)途中には若干の山道
ナコーンラチャシーマー郊外のイーサン高速鉄道高架工事。バンコク~ナコーンラチャシーマー253km間、現在4~6時間が1時間半になり運賃は2等で535THBになる。現状の3等運賃50THBの10倍以上。
東南アジア縦断高速鉄道
気になるのはこの壮大な国際プロジェクトが完全に中国主導で、高速鉄道が得意分野のはずの日本が全く関与できていないということだ。
視点を変えて言うとイーサンラオスルートのような未開発地域の閑散ルートに日本式の最先端の高額な高速鉄道は相手にされないということなのだ。イーサン高速鉄道は立ち上げられてから一時停滞した。中国側の借款の利息が高いことでタイ側から待ったがかかり、工事延期が続いていたが、ここにきて正式合意。これはどういうことを示しているかというと、中国側の一帯一路以上にタイ側にも高速鉄道敷設への強い要望があるということなのだ。
タイ東北高速鉄道新駅と高架工事。バンコク~ナコーンラチャシーマー253km の高架区間は189km。
イーサン高速鉄道 ラオス新幹線フェーズ1
バンコク~ビエンチャン
イーサン高速鉄道フェーズ1の停車駅は6駅。バンスーセントラル → ドンムアン →アユタヤ →サラブリー →パークチョン →ナコンラチャシーマー。バンコク~ナコーンラチャシーマー所要1時間半。
ナコーンラチャシーマー行列車
タイ北部高速鉄道計画消滅
インドネシアに続きタイでも中国に敗北
タイ政府がタイ北部高速鉄道(チェンマイ新幹線)計画を断念した。日本の新幹線で決まっており、日本側によるピサヌロークまでの第1期区間は2019年着工、25年開業とされていた。いつまでたっても工事が進まないのはなぜか不思議に思っていたが計画断念という形で決着。2019年9月にタイ公共放送
TPBS、バンコクポストがタイ政府筋情報として報じた。
理由は工費も維持にも金がかかりすぎる。開通しても日本側が採算を予想して提示するそんな運賃では誰も乗らない。先方の望む高速鉄道を日本側が提示できなかった。代わりに中国製イーサン高速鉄道は契約締結で工事が急速に進む。日本はインドネシアに続きタイでも中国に敗北した形になる。
先方が望むのは「日本の最高水準技術のガラガラの閑散高速鉄道」ではなく、最高水準でなくていいので「庶民に支持される満員混雑の高速鉄道」。しかも日本が廉価版で押し付ける「在来線高規格化」ではなく「高速鉄道」なのだ。さらに言うとかの国では200km/hの高速鉄道の定義も重要ではない。
予算分担の押し付け合いが破談の原因のように言われるが、それ以前の元々の金額が大きすぎることが原因なのだ。新興国の高速鉄道では日本国内の新幹線工事のように湯水のごとく税金はつぎ込めない。日本は相手の望む工費も維持費もかからない廉価版高速鉄道をいまだ提示できていないのだ。
ナコーンラチャシーマーに向かうタイ国鉄3等列車車両
日本製高速鉄道計画消滅の理由
台湾新幹線赤字転落。インドネシアで高速鉄道計画を中国にさらわれ、2020年9月にはスリランカの次世代型路面電車(LRT)計画も高額理由に消滅。インド西部高速鉄道建設計画の「2023年の開業を5年延期」にも同じ流れを感じる。E5系はやぶさ投入予定、最高時速320kmというが、「ODA事業費も当初の1.8兆円から2兆円超へ」は異様だ。ムンバイ~アーメダバード間508km。運賃3000ルピー(4500円)。現在の急行と比べると2等車の15倍。日本人観光客には無縁だが、多くの地元民で混雑する普通3等(ジェネラル)比較なら25倍。タイでの消滅の理由も、LCCが格安フライト飛ばしている現在「誰が乗るんだそんな値段で」という極めてシンプルな理由なのだ。
高速鉄道インフラの現地需要はある。なので実際に中国製CR300AFイーサン高速鉄道工事は進んでいる。求められているのは最高の技術でなく、地元の方々が気軽に乗れる持続可能な高速鉄道なのだ。高額の費用がないと維持できない「最高の技術」は日本側の自己満足でしかないことに気づくべきだ。
タイのわんこは自由だ。コラート行の普通列車。バンコク~コラート50B。日本でこれだけ身を乗り出したらきっと車掌さんに怒られる。
びー旅つぶやき コロナインパクト渦中
Goto国内旅行
10:11 2020/10/27
例年なら出国のカウントダウンをしている時期なのに今年はフライトの予約さえしていない。正直旅の禁断症状が出ている。豪華ホテルでなくていいので南の国に行きてえ。禁断症状に耐えかねて、盛んに「Gotoで安くなる」と喧伝している国内で妥協の選択も検討してみる。
で、ジェットスター国内線フライトあたる。LCCはGoto施策の範囲外だが帰路便209円のキャンペーンをやっている。検索するとプロモ最安で成田那覇往復7,459円。微妙。ホテルにはGotoや都民割使える。しかしGotoの難点はベースにそこそこの出費がないと恩恵があまりないこと。1泊3万円のホテルに泊まるような小銭で金持ち気分味わうにはばっちりだが、1泊3000円のホテルには恩恵が少ない。だからもっと使おうの罠がある。数万円のホテルが実質3000円とか言って話題にするも、結局旅の総出費はそこそこかかる。手続きも日本のお役所システムらしくわかりづらく面倒。煩雑な手続きで小銭得して行きつく先がテンション激低な冬の曇天国内観光地は悲しい。安さよりキラキラを優先するびー旅スタイルに反する。Gotoで行く豪華宿3泊4日旅と同じ値段でタイやカンボジアには1カ月滞在できる。あっちは4月頃まで乾季で連日気温は30℃。やはりじっと我慢でコロナ明けを待つ方が賢明か。
去年乗ったジェットスター宮古島線10月25日から3月27日まで成田便、関西便とも運休。年末年始のみ臨時運航とのこと。
●ジェットスター成田~那覇プロモの例
ジェットスター成田那覇線帰路209円期間限定プロモ。税込往復6,219円。手数料が高く1,240円。最終支払い往復7,459円。微妙。結局予約せず。
タイのわんこは自由だ。ナコーンラチャシーマー行3等列車から